初恋とチョコレートと花束と。
「・・・それじゃ、僕は先に行くから」
玄関で靴を履き替えたとたん彼はそう言って、すたすたと歩き始める。
クラスメイト達のスニーカーもいくつか置いてあるから、多分先に登校してきてる人達に一緒に来たのがバレないようにするため・・・なんだと思う。
「あ、うん。わかった。またあとでね」
慌ててその背中に向かって言ったけれど、聞こえてたかな?
それにしても、今日は朝からなんだかラッキーな気がする。
矢川くんと普通に話せたし、下校班も一緒だってことも知れたし・・・。
トントンと一歩ずつ、2階まで続く階段を登っていく。
なんでなのかはわからないけれど、最近矢川くんのことを知れば知るほど楽しくなってくる。
毎日がドキドキワクワクして、明日はどんな話ができるかな、って考えながら眠って・・・。
――あ、でもアリスと友達になったばかりの頃も、同じようなことを感じてたっけ。
ということは、私と矢川くんがだんだん仲良くなってきてる・・・ってこと?
友達だって・・・矢川くんも思ってくれてるといいな。
そう考えながら、私は教室の中に入った。
「あ、おはよー綾ちゃん」
「うん、おはよう!」
話しかけてきてくれた人達に挨拶して、自分の席に座る。
さっきまで一緒だった矢川くんはというと、もう朝の支度が終わって本を読んでる。
・・・準備終わるの、早すぎない?
それとも私が遅いだけ?
どっちだろうとしばらく考えても、答えは出なくて。
諦めた私は、机の引き出しに教科書をしまう。
「・・・あ」
最後にランドセルから取り出したのは、アリスとの交換ノート。
そういえば昨日の夜に用意している途中、あとで出しておこうって思ってそのまま忘れちゃったんだっけ。