初恋とチョコレートと花束と。
――次の日。

私が教室に入ると、矢川くんが席に座って本を読んでいた。
相変わらず、朝早いなぁ・・・。一体いつから来てるんだろう?

そう考えながら自分の席にランドセルを置くと、とても小さな声だったけれど隣から「・・・おはよ」と聞こえてきた。

「あ、えっと・・・おはよう!」
慌ててそう返すと、矢川くんは読んでいた本から顔をあげる。
それと同時にぶつかった視線に耐えられなくて、私はすぐに目をそらした。

「・・・そういえば矢川くん、昨日・・・」

そう言いかけた時。


「ごっめーん!!あたし綾にあれ渡すの忘れてたよー!」

その言葉と共に、教室の前側のドアが勢いよく開く。
さっきまで話をしていた、この声は・・・。

「アリス?どうしたの急に?」

私の親友、星波アリス(ホシナミ アリス)。
家がとっても大きくて、お姉ちゃんいわく「この辺りに住んでる人で星波家を知らない人はいない」らしい。

「はいこれ、交換ノート。今回はたっくさん書いたから!」
私はアリスの側まで行くと、差し出されたノートを受け取る。

去年の秋から始めた、アリスとの交換ノート。
その日に学校とか家であったことや、最近好きになったものとか、色々とこのノートに書てるんだ。
アリスの書くことはとても面白いから、早く家に帰って読みたいなぁ。


――そういえば、もうほとんどページ残ってなかったよね?

――今度、新しいノート買いに行こっか。

そんな話をしていた時。

「・・・ところで綾、あの子って・・・誰だっけ?」
アリスが聞きたい事はすぐにわかった。
というのも、教室には私と矢川くん以外人がいないからなのだけれど。

「今、本を読んでいる人でしょ?アリスがよく話していた矢川くんだよ」
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