フェイス
☆☆☆

カナタ先輩は行きつけのカラオケ屋があるらしく、そこに行くことになった。


あたしがよく行くカラオケとは違い、カップル専用の部屋がいくつかある。


2人かけのソファと小さなテーブル。


2人は自然と距離を縮めることになるみたいだ。


「カナタ先輩、何歌います?」


そう言って選曲の機械を渡した。


「とりあえず盛り上がる曲」


曖昧にそう言って流れ出したのは今年流行った曲だった。


誰もが知っているからハズれのない曲だ。


一曲目を自分から歌うのも、カナタ先輩は馴れている様子だ。


それから1時間ほどあたしたちは交互に歌った。


カナタ先輩の前で歌を歌うなんて恥ずかしいと思っていたけれど、あたしは今葉月じゃない。


ナナなんだ。
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