フェイス
「ごめんなさい。ちょっとお手洗いに」


あたしはそう言うと部屋から出て走ってトイレへと向かった。


スカートのポケットにはしっかりクリームを入れて来た。


鏡の前に立ち、おでこの上に指をめり込ませる。


フェイスを一気に引きはがすと、そこに出て来たのは真っ赤に腫れ上がって自分の顔だった。


見るに堪えないくらい赤い。


爪を立ててかきむしりたいくらいだけれど、グッと我慢してクリームを塗って行く。


いよいよフェイスはあたしには不向きなのだと理解してきた。


けれど、それでもやめるつもりなんてない。


痒い事だけ我慢していれば、あたしはいつまでも可愛い女の子でいる事ができるんだから。


顔中にクリームを塗ると痒みは次第に治まって来た。


ホッと安堵のため息を吐き出し、再びナナのファイスを着用すると、あたしはトイレを出たのだった。
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