フェイス
☆☆☆

部屋に戻るとカナタ先輩はスマホをいじっていた。


「遅くなりました」


「女の子のお手洗いが長いのはわかってるよ」


カナタ先輩は笑顔でそう言い、スマホをテーブルの上に置いた。


そしてその手をあたしへ向けて伸ばして来た。


「おいでナナ」


突然呼び捨てにされて混乱する。


付き合い始めてまだ数十分しか経過していない。


「俺のこともカナタって呼び捨てにしてよ」


そう言われて体がカッと熱くなるのを感じた。


学校内でずっと見つめてきた憧れのカナタ先輩。


そのカナタ先輩が今あたしへ向けて手を伸ばし、呼び捨てにしてと行って来ている。


それだけであたしの心臓は爆発してしまいそうだった。
< 139 / 271 >

この作品をシェア

pagetop