フェイス
あたしはカナタ先輩の手を握りしめた。


途端にグイッと引き寄せれられ、カナタ先輩の胸にスッポリを包み込まれてしまう。


男の人の香りがする。


カナタ先輩は爽やかな香りのする香水をつけていた。


「ね、呼び捨てにして?」


そんな声が頭上から聞こえてきて、頭がクラクラし始めた。


「カナ……タ」


恥ずかしくて全身から火を噴いてしまいそうだ。


カナタ先輩は満足そうに「よくできました」と言って来た。


そっと顔をあげると、そこにはカナタ先輩の顔がある。


照れくさくて顔を背けようとしたとき……先輩の唇が、あたしの唇に押し当てられていた。


柔らかくて少し湿ったその感覚に目を見開く。


叫びそうになったけれど、口をふさがれているのでそれもできない。
< 140 / 271 >

この作品をシェア

pagetop