フェイス
☆☆☆

向かった先は近くのファッションビルだった。


最近新しい店舗が入ったらしいが、まだ1度も来たことがなかった。


ユナになったりナナになったりする時間が多くて、ちょっと忙しかったからだ。


「うわぁ、キラキラだね」


店内へ足を踏み入れた途端、勇がそう言った。


色んなショップが所狭しと並んでいて、その1つ1つが目立つように飾り付けを行っているからだ。


このファッションビルに入ると、あたしでも目がチカチカする。


「嫌?」


「嫌なんかじゃないよ。ここはユナちゃんの似合うものも沢山ありそうだね」


そう言いながら、勇は興味津々で店内を見回している。


ユナに似合う綺麗目の服を数着購入することにした。


「そういえば、梓ちゃんって可愛いね」


買い物がひと段落ついて、ファミレスで休憩している時あたしはそう言った。


梓の名前が出た瞬間、勇は険しい表情を浮かべた。
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