フェイス
それなのに、勇は徐々に怪訝そうな顔を浮かべていく。


「どうしたの勇? 葉月の良さに今更気が付いた?」


そう聞くと、勇があたしの頬に触れて来た。


咄嗟に身を離す。


「あ、ごめん。でも血が出てるから……」


そう言われてハッと息を飲んだ。


ひっかきすぎたんだ!


そう気が付ついて、すぐにトイレへと駆け込んだ。


鏡の前に立つとフェイスの一部が破れて、そこから血が滲んで出てきている。


それを見た途端、痒みが顔中に広がった。


耐えがたい痒みだ。
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