フェイス
そう呟いて鏡の前立った。


そこに映っていたのはナナでもユナでもなく、ただの葉月だった。


映えない顔。


可愛くない顔。


パッとしない顔。


「違う‼‼‼ こんなのあたしじゃない‼」


悲鳴に近い声をあげて拳で鏡を割った。


大きな音が響き渡り、拳に鏡が突き刺さる。


「あたしは可愛い‼ あたしは可愛い‼ あたしは可愛い‼」


叫びながら、何度も何度も鏡を叩き割る。


破片が手に突き刺さっても気にならなかった。
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