フェイス
鏡に映っている醜い顔の女がいなくなってくれれば、それでよかった。


鏡を粉々にしたあたしは肩で呼吸を繰り返し、ナナのフェイスを手に取っていた。


「あたしは可愛い。あたしはカナタ先輩に選ばれたんだから」


ブツブツと呪文のように繰り返し呟き、ナナのフェイスを顔に付けた。


ピッタリと顔に貼りつく。


術後間もないせいか、肌に激しい痛みを感じた。


「あ……あぁぁぁ……‼」


小さくうめき声を上げて痛みをたえる。


フェイスは顔の肉に深く食い込み、元の顔の形がわからなくなっている。


それでも、鏡の破片で確認してあたしは可愛かった。
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