フェイス
それから何度となく彩羽から『誘ってきなよ』と提案され、あたしは渋々勇に声をかけることになっていた。


普段なら何気なく自然に声をかけることができるのに、いざ遊びに誘うとなるとどう声をかければいいのかわからない。


時間ばかりが過ぎて行き、あっという間に放課後になってしまった。


「頑張れ葉月!」


みんなが教室内から出て行く中、彩羽が小さな声でそう耳打ちをしてきた。


勇はまだ教室に残っていて、友達と談笑している。


「うん」


あたしは覚悟を決めて、勇がいる窓際へと向かった。


数人のクラスメートたちがいるけれど、もう声をかけるタイミングは今しかない。

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