フェイス
緊張する心臓をどうにかなだめて、あたしは勇の前に立った。


「なに?」


少し首を傾げてそう聞いてくる勇。


「あのさ、今日って時間ある?」


緊張で声が裏返ってしまった。


いつもの調子で声をかけることができなくて、ついうつむいてしまう。


「あぁ~……今日?」


顔を見なくても、勇の困った声ですべてが理解できた。


「ごめん。用事があるんだ」


本当に済まなさそうな声。


あたしの胸がチクリと痛む。


目の奥がジンッと熱くなったけれど、こんなところで泣く事もできない。
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