フェイス
あたしは涙を無理やり押し込めて、笑顔で顔を上げた。


きっと、世界一ブサイクな笑顔になっていることだろう。


「そ、そっか」


「悪いな。何か用事だった?」


勇が頭をかきながらそう聞いてくる。


その優しさが、今は痛い。


「な、なんでもないの! ちょっと聞いてみただけだったから。じゃあ、あたし帰るね、バイバイ!」


早口にそう言い、あたしは逃げるように教室を出たのだった。

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