フェイス
☆☆☆

教室の外では彩羽が待っていてくれたけれど、あたしはそれを無視してトイレに駆け込んだ。


無理なのはわかりきった事だった。


用事があるって知っていれば、声をかけることもなかった。


個室に入って深呼吸をする。


自然と涙が浮かんできた。


「葉月、大丈夫?」


ドアの外から彩羽の声が聞こえて来た。


「だから……無理だって言ったじゃん」


声が震えていた。


「ごめん葉月……でも、勇が断ったのは葉月の見た目とか、そういうじゃないと思うよ」


「いい加減にしてよ!!」


あたしは彩羽がすべてを言い終える前にそう怒鳴っていた。
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