フェイス
☆☆☆

一旦輪を抜けてトイレへ向かったあたしは、鏡の前に立っていた。


焦ってフェイスを付けてきたものの、それはとても綺麗に装着されている。


誰がどう見てもあたしだとは思わなないだろう。


それを確認して、ホッと安堵のため息を吐き出した。


1度勇と視線が合ってから、何度かこちらを見られているような気がしていた。


もしかしてバレてしまったのではないかと、不安になっていたのだ。


でも、気のせいだったようだ。


手を洗ってトイレから出る。


「ねぇ君」


途端にそう声をかけられて、小さく悲鳴を上げていた。
< 60 / 271 >

この作品をシェア

pagetop