フェイス
あたしはホッとして笑顔を見せた。


勇の頬が一瞬で赤く染まる。


「ありがとう。実は困ってたの」


「そうだったんだ?」


「うん。どうやて逃げ出そうかと思って」


「それなら、このまま一緒にここを出ようよ」


そう言い、勇はあたしの手を握りしめて来たのだ。


咄嗟の事に驚いて勇を見つめる。


勇がこんな風に手を握って来る人だとは思わなかった。


「どうした? 早く行くよ?」


勇に手を引かれて、あたしは慌ててそれについて歩き出したのだった。
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