フェイス
「え?」


「葉月とはクラスメートだけど、よく知らないし。それなら君と一緒に観た方が楽しいかな」


勇の言葉にあたしは一瞬言葉を失ってしまった。


そんな事を言われるとは思っていなかった。


けれどあたしは笑顔を絶やさなかった。


この顔になって勇に会い、そして恋人になることがあたしの計画だ。


少しくらい自分の悪口を言われても、我慢しなきゃいけない。


「そう言ってもらえると安心する。葉月には申し訳ないけど、勇君と会えてよかった」


そう言って、照れたように俯いた。


勇の頬が緩んでいるのがわかる。


「じゃあ、一緒に行こうか」


「うん」


こうしてあたしと勇は一緒に映画館へと向かったのだった。
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