復讐日記
今ならまだ逃げられる距離なのに、その距離はどんどん縮んでいく。


後ろには花音もいるはずなのに、フードから見える男の目はジッとあたしを見据えている。


体が震えて立ち止まりそうになるのに、そんな意思とは関係なく男へ近づいていく。


そして次の瞬間……。


男とすれ違う時キラリと光る刃物が見えた。


目を見開き男を見つめる。


刃物の先があたしの左腕に突き立てられるのを、まるでスローモーションのように見ていた。


痛みを感じるより先に、男が走って逃げだした。


目の端でその光景を見ながら、あたしはその場に膝をついていた。
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