色眼鏡
聞こえない
体育の授業が終わってからも、あたしは茫然として立ち尽くしていた。


まさか、こんなことになるなんて思っていなかった。


世界が終ったワケじゃない。


だけどあたしを作り上げる世界は、ほとんどがこの学校でできている。


「里菜、行くよ」


そう言われて視線を向けると、そこには夏生が立っていた。


「夏生……なんで、いるの?」


思わずそう聞いていた。他のみんなはとっくに教室へ戻っている。


「いちゃ悪い?」


あたしは左右に首をふった。


こうして夏生と並んで歩く事なんて、今までなかった。


妙な緊張感が漂う。
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