色眼鏡
☆☆☆

あのメモの通りクラスメートたちは必要最低限の事以外は話かけてこなかった。


美穂も遠くからあたしを見つめるだけ。


そんなものだ。


そう思うのに、どこかで美穂が味方になってくれるのではないかと、期待していた。


そんな期待も空しく放課後がやって来た。


あたしは眼鏡を鞄にしまい、教室を出る。


朝ちゃんと挨拶をしてくれた子が、放課後には挨拶をしてくれなくなる。


これが、あたしたちが見えている世界だった。


「里菜、またね」


その声に驚いて振り返ると、そこには夏生が立っていた。


夏生はいつも通りの表情であたしに手を振っている。


「……またね」


あたしはそう返事をして手を振ったのだった。
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