色眼鏡
「すみません。じゃあ少しだけ外に出てみます」


「どうぞどうぞ」


にこやかな男性を背にしてあたしは外へ出て見た。


途端に戻ってくる喧騒。


外の景色をぐるりと見回して度数を確認する。


フワフワと浮いているような感覚もなく、とても見やすい。


本当に、あたしの為に用意されたように感じられて嬉しくなった。


でも、残念ながら買う事はできない。


頑張ってバイトをしても、これを購入できるまでにどれだけ時間がかかるかわからない。


そう思って振り向いた時だった。


あたしは唖然としてその場に立ち尽くしてしまった。


直前まで確かに存在していたはずの店が、姿を消していたのだ。
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