色眼鏡
話す
夏生はどうして平気なんだろう。


みんなが見ている中、どうしてあたしに声をかけることができるんだろう。


大勢の子が、そんな勇気ないというのに。


最後にかけられた些細な挨拶に胸の中が一杯になっていく。


情けないと思いながらも、涙が滲んで出て来た。


夏生からは本心が聞こえてこない。


それは、夏生がいつも本心を口にしているからだった。


何も我慢せず、だけど人を傷つけない、そんな風に生活をしているからだ。


あたしは滲んできた涙を強くぬぐった。


このくらいで泣いていたら前になんて進めない。


この眼鏡のおかげでみんなの本心を知ることができたんだ。


どれだけ汚い言葉でも、知ることができたんだ。
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