色眼鏡
「行こう」


それを無視し、あたしは夏生の手を握りしめ、走り出した。


後ろから美羽たちの怒鳴り声が聞こえて来る。


足を止めたらこの世が終わる。


きっと、そこまで大げさなことじゃないんだろうけれど、あたしはそんな気持ちで走った。


家の近くの公園まで走って来て、あたしはようやく足を止めた。


大きく深呼吸を繰り返す。


肺が痛い。


「あははっ」


そんな笑い声が聞こえてきて、あたしは夏生を見た。


いつもクールな夏生がおかしそうに声を上げて笑っているのだ。
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