色眼鏡
あたしは瞬きを繰り返した。


『突然会社が倒産したらしく、今出回っている以外の商品が入手できないみたいなんです』


申し訳なさそうにそう言う女性。


だけど、それならもっと早くにわかっていてもいいはずだ。


「どうして今頃そんな連絡してくるんですか?」


もっと早くわかっていれば、あの日コンタクトじゃなくて眼鏡を買って帰ったのに!


『申し訳ございません。こちらにも会社の倒産が伝えられていなかったもので……』


「そんな……」


唖然としていると、夏生が肩を叩いて手招きをして来た。


あたしは電話を切り「なに?」と、聞いた。


「お婆ちゃんの眼鏡が見つかったの」


その言葉にあたしの心臓はドクンッと大きく跳ねたのだった。
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