色眼鏡
☆☆☆

あたしと夏生は中庭へと移動して来ていた。


もう次の授業が始まっているけれど、出席する気はなかった。


「どうしよう、緊張する」


あたしは夏生が持っている眼鏡ケースを見てそう言った。


オレンジ色の花柄の、可愛いものだった。


「あたしも。見た目が里菜の眼鏡とよく似てるから、同じものだと思うんだけど」


「でも、これを買う時は一点ものだって言われたよ?」


「そうなんだ……。とにかく、確認してみて」


そう言われて、あたしは眼鏡ケースを手に取った。


意外と軽い。


その感覚に更に緊張は加速した。

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