色眼鏡
「そうだよ。それであたしの本心を読んでみて」


そう言われて、あたしは夏生のお婆ちゃんの眼鏡をかけてみることにした。


かけた感触も、全く同じだ。


しかし、夏生の声は聞こえてこない。


「今、なにか考えてる?」


「うん。お腹減ったって考えてるよ」


そう言われて笑ってしまった。


「そうじゃないよ。もっと……人の悪口とかが一番聞こえてくるんだよ」


あたしがそう言うと、夏生は少しだけ眉間にシワを寄せた。


「わかった」


そう言い、何かを考えるような表情になる。


けれどやっぱり何も聞こえてこない。
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