色眼鏡
選ばれる
老人ホームは相変わらず可愛らしい外観をしていた。


中へ入って行くと、一瞬職員さんの表情が険しくなったのがわかった。


この前あたしが来た時にフサエさんの様子が急変したからだろう。


「里菜、一旦眼鏡を外して」


夏生にそう言われて、あたしは眼鏡を外した状態で部屋の中へと入って行った。


「お婆ちゃんまた来たよ。今日も友達と一緒。覚えてる?」


フサエさんは寝起きなのか欠伸をしている。


理解していないのかと思ったけれど、夏生の顔を見るとクシュッとした笑顔を浮かべた。


「夏生よく来たね」


「お婆ちゃん。あたしの友達だよ」


夏生の紹介にあたしは一歩前へ出た。


「こんにちは菅原里菜です」


そう言うと、フサエさんはあたしにも笑顔を向けてくれた。
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