色眼鏡
「よく来たね。ありがとう」


その返答にあたしまで笑顔になった。


できればこのまま穏やかな時間を過ごしたい。


でも、今日の目的は眼鏡を見せることにあった。


「お婆ちゃん。今日ね、お婆ちゃんの部屋からあるものを見つけて、持って来たの」


「なんだい? お手玉か、あやとりか?」


「そうじゃなくてね……」


夏生は躊躇しながらも、鞄の中から眼鏡ケースを取り出した。


「これ、覚えてる?」


夏生がフサエさんの膝に眼鏡ケースを置いた。


フサエさんはそれを手の平で撫ではじめた。
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