色眼鏡
☆☆☆

一瞬にして深い眠りに入って行ってフサエさんに、あたしと夏生は仕方なくホームから出ていた。


「お婆ちゃんやっぱりこの眼鏡になにか思い出があるんだね」


夏生が眼鏡ケースを見つめてそう言った。


「そうだね……」


だけどそれは楽しい思い出じゃなさそうだ。


フサエさんは終始怯えた表情をしていた。


「眼鏡に選ばれたって、どういう意味だと思う?」


そう聞いてみると、夏生は首を傾げた。


「ごめん、あたしにも全然わからない」


「そうだよね……」


この眼鏡を買った時、確かにあたしは引き寄せられるように感じられた。
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