色眼鏡
ノートを写し終えた美穂がそう声をかけて来た。


「そうかな……」


「そうだよ(こいつ、何様?)」


美穂の本心をあたしは聞こえないフリをした。


ノートを受け取り、再び文庫本に視線を落とす。


「晃の事、嫌いなの?」


「別に嫌いじゃないけど」


「じゃあどうして?」


お前らのせいだろうが。


そう言えたら楽なのに、あたしは笑っていた。


「ただの幼馴染だから」


あたしはそう返事をして、トイレに立ったのだった。
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