色眼鏡
思い出す内に心の奥がジワリと暖かくなった。


知らない間に目から涙がこぼれおち、自分の手の甲を濡らしていた。


「里菜……?」


「なんで忘れてたんだろう……」


こんなに暖かくて優しい気持ちを。


「なにか思い出したの?」


夏生にそう聞かれ、あたしは手の甲で涙をぬぐった。


「あたし、ずっと晃の事が好きだった。晃があたしのことをどう思ってるのか、知りたいと思ってた」


ようやく思い出した、大切な気持ち。


あたしは幼い頃からずっと、今までずっと、晃のことが好きだったんだ。


だから、この眼鏡を作りたくて仕方がなかったんだ。
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