色眼鏡
気のせい……?


あたしは再び視線を教科書へと移動させた。


「この病院の看護師さん美人なんだよなぁ。今度デートに誘ってみよう」


今度はそんな声が聞こえて来たのだ。


あたしは驚いて顔を上げた。


患者さんはみんな雑誌を読んでいたり、自分の子供相手をしていたりする。


若い男性の姿もあるけれど、その人も漫画を広げている。


誰の声……?


あたしは自分の耳に手を当てた。


辺りをキョロキョロと見回す。
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