色眼鏡
その唇が、動いた。


しかし、男性の声を聞きとる事はできなかった。


「え? なんですか?」


あたしがそう聞くと男性はまた口を動かした。


けれど、全く聞こえてこない。


あたしは男性の声をよく聞くために一歩前へ踏み出した。


すると男性は2歩後退した。


これじゃ声が聞き取れない。


「なにを言ってるんですか?」


もどかしくなり、男性にどんどん近づいていく。


その分、男性は後ろへと下がって行く。
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