色眼鏡
「2万円ですか? でも、その眼鏡はまだ新しそうですよね?」


「でも、他のがいいんです。これじゃないのが欲しいんです」


「はぁ……(なにこの子、変な子)」


店員さんの心の声に、あたしはグッと言葉を飲みこんだ。


高価な眼鏡よりも安い眼鏡が欲しいと言っているのだから、変だと思われても仕方がない。


あたしは黙って商品を選び始めた。


どれでもいい。


とにかくこの眼鏡を使わなくていいようにしたい。


そう思って選んでいたのだけれど、なかなか決めることができない。


ここで購入して、もし同じような眼鏡だったらどうしようという不安が胸をよぎる。


そんなことはあり得ないとわかっているのに、手に取る事ができない。
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