色眼鏡
ぼやけた視界の中、女性があたしの横を走って横断するのが見えた。


顔を上げ、状況を把握する。


輪郭のない信号機が、赤に変わっていることに気が付いた。


散乱したままのオレンジが車のタイヤに踏みつぶされた。


「危ない!」


その声と同時にあたしの体は突き飛ばされるようにして転がっていた。


「え……?」


唖然として空を見上げる。


「なにしてんのお前。死にたいわけ?」


怒った声は晃のものだった。


ハッとして視線を移すと晃があたしの目の前にいる。
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