色眼鏡
「晃……?」


「なにボーっとしてんだよ。赤信号だろ」


怒ったままの晃がそう言い、手を掴まれて引き起こされた。


どうやらあたしは赤信号になった横断歩道の上で棒立ちになっていたようだ。


「ごめん、ありがとう」


「お前、眼鏡は?」


「……持ってる」


そう答えると、晃のため息がふってきた。


「持ってるだけじゃ意味ないだろ」


「……ごめん」


あたしは小さな声でそう言って、鞄から眼鏡を取り出した。
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