色眼鏡
かけたくない。


だけどかけなきゃ、今みたいなことが起こってしまうかもしれない。


晃の本心がどんなものか、知りたくない。


きっと怒っているから。


でも……目の前の晃も、もう怒っている。


あたしは諦めて眼鏡をかけた。


「行くぞ」


晃はそう言いあたしの手を握りしめて歩き出した。


晃の本心は聞こえてこない。


「晃……あたしのこと、怒らないの?」


「はぁ? もう怒っただろ?」


「そうじゃなくて……」


本心なら、きっともっと怒っているはずだ。
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