色眼鏡
「そうなんだ。度数が合ってないんじゃない?」


「そうかも」


適当に返事をしていると、美穂がムッとした表情になったのがわかった。


「あ、えっと、ちょっと疲れてて、ごめんね」


「どうしたの里菜? なんでいきなり謝るの?」


首を傾げてそう聞いてくる美穂。


ダメだ。


なにをしても空回りする。


本心が聞こえなくても、一度本心を聞いてしまったから、今度は過剰に相手の顔色を見るようになっている。


「な……んでもないよ、ごめん……」


モゴモゴと口ごもりながらそう言い、俯いた。
< 91 / 258 >

この作品をシェア

pagetop