色眼鏡
保健室の先生かもしれない。


「里菜、いる?」


その声に緊張が走った。


誰だろう?


美穂の声じゃなかったけど……。


あたしは上半身を起こし、カーテンの向こう側を見つめた。


人影が動いている。


「……誰?」


そう声をかけると、カーテンが開けられた。


そこに立っていたのはクラスメートの安東夏生(アンドウ ナツキ)だった。


夏生はクラスの中でも大人しく、だけど地味というワケではないタイプの生徒だった。
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