色眼鏡
☆☆☆

夏生に誘われたあたしは1人で体育館へと向かっていた。


誰もいない廊下はとても静かで、本心が聞こえて来るなんて嘘みたいに思えた。


体育館のドアを開けるとすでに先生も来ていて、みんな整列している状態だった。


あたしはその光景をチラリと見て、壁際に座っている夏生の横に腰を下ろした。


今日はバレーボールの日だ。


「眼鏡、どうして手に持ってるの?」


夏生にそう言われてあたしは手元の眼鏡に視線を落とした。


「必要な時だけかけようと思って」


「眼鏡がないと試合が見えないでしょ。見学者は得点係だよ」


「……そっか」


体育は滅多に見学しないため、そんなルールすっかり忘れてしまっていた。
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