双子姉妹
髪の毛くらい自分でできるのに。


そう思っても口には出せない。


されるがままになりながら、あたしは鏡の中のユキエさんの顔を盗み見た。


「買い物に行きたい」


小さな声でそう言ってみると、ユキエさんは驚いたような顔を浮かべた。


ハッとして視線を逸らすようにうつむく。


ただ『買い物に行きたい』と言っただけで驚かれるなんて思っていなかった。


なにか変な事をしただろうかと、ドキドキする。


「お嬢様が自分から外へ出るなんて、珍しいですね。喜ばしいことです」


驚いた顔を一変させ、ニコニコとほほ笑んでユキエさんはそう言った。
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