双子姉妹
すでに何度も拷問されたことがあるのか、肌がボロボロになっている人もいる。


その中では武人君の綺麗な肌は浮いて見えた。


あの肌に自分の肌を会わせたのだと思うと、つい視線を向けてしまう。


あの手があたしに触れて、あの口で愛を呟いたんだ。


でも、それは全部嘘だった。


全部会社のためだったんだ。


そう思うと、途端に胸の奥から黒い感情が湧き上がって来た。


あたしは本当に武人君の事を好きになった。


だからこそ、初めての相手にしたんだ。


それなのに、武人君は違った。


関係を持った瞬間、一番大切なのは会社だと見せつけられた。


悔しさが込み上げて来る。


「武人君」


あたしの口は、彼の名前を呼んでいた。

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