双子姉妹
あたしは何も返す事ができなかった。


ユキエさんの言う通りだ。


生まれる場所を間違えたのだと思っていた。


「だって……あたし……小春ちゃんになりたくて……」


「なれたじゃないですか。お嬢様はもうここには戻ってきません。今日からあなたが正式なお嬢様ですから」


ユキエさんがそう言った瞬間、部屋の中に見知らぬ男たちが入って来た。


みんな白衣を着て、マスクをつけている。


「なに……?」


「お嬢様と全く同じお顔になっていただきます。これで誰にも怪しまれることなく、ここで暮らす事ができますよ」


ユキエさんがそう言いニヤリと笑った。


男の1人が鞄から注射器を出すのが見えた。


「まって! やめて!」
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