沈黙する記憶
☆☆☆

6畳ほどの部屋には大きなモニターが置かれていて、そのモニターの前に杏の両親が立っていた。


「千奈ちゃん……」


杏のお母さんはあたしの顔を見て安心したようにほほ笑んだ。


しかし、やはり眠れていないのか顔は随分老けて見えた。


あたしは杏の両親に軽く会釈をして、モニターの前へと移動した。


画面は真っ暗だ。


「みんなも、杏のために来てくれてありがとう」


杏のお父さんが、他のメンバーに頭を下げている。


モニターの奥に立っていた1人の警察官が、「それでは、もう一度監視カメラの映像を流しますから、みなさんもしっかりと見てください」と、言った。


そしてモニターに映像が映し出される。


画像は荒いが、カラーだ。


ここはどこのスーパーだろう?


近所で見たことのないスーパーだ。


「場所はKマートよ」


杏のお母さんがそう言った。


「Kマート?」


あたしは首をかしげ、同時に眉間にシワを寄せた。


Kマートは郊外にある小さなスーパーだ。


近くにショッピングモールがあるのに、わざわざKマートに行く理由がわからなかった。
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