沈黙する記憶
夏男との約束場所にKマートを選ぶなんて思えない。


やっぱり、誰かが夏男のスマホを使って杏をこんな場所までおびき出したと考えるのが正しい気がする。


そうなれば一番怪しいのは夏男の両親だ。


あたしはチラリと裕斗を見た。


裕斗はモニターにかぶりつくように画面を見ている。


映像の中に何か事件解決へのヒントがないか、探っているようだ。


「杏は、こんな場所で1人でいたとは思えない……」


そう言ったのは杏のお父さんだった。


その言葉にあたしはドキッとする。


「そうよね。あの子はまだ免許もとっていなかったし、歩いてこんなに遠くまで移動するなんて考えられないわ」


杏のお母さんも賛同する。


「自転車は使ってないんですか?」


裕斗が聞くと、杏の両親は頷いた。


自転車は家におきっぱなしにされているらしい。
< 103 / 229 >

この作品をシェア

pagetop