沈黙する記憶
裕斗が聞き返す。


「あぁ。ラブホテルは誰にも邪魔されずに会話のできる、とっておきの場所じゃないか。杏は夏男と2人きりでホテルに行っても警戒心はない。そんな中妊娠したとカミングアウトして、逆上した夏男は……」


そこまで言って克矢は言葉を切った。


「なに言ってるのよ! そんなわけないじゃん!!」


由花が声を荒げて否定した。


克矢の言いたいことはわかるけれど、それはあまりにもひどかった。


あたしは……ううん、あたしたしは夏男を信じているし、杏も嘘をついていないと信じている。


それを前提に行動してきたはずだ。
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