沈黙する記憶
☆☆☆

昨日の公園に到着すると、さやも由花も克矢も裕斗もそろっていた。


「ごめん、遅くなった」


「ううん、大丈夫だよ。ごめんね昨日あたしが変な事言ったからだよね?」


由花が昨日の電話の事を気にして、駆け寄ってきた。


その目は少しクマができている。


由花も由花で悩んで眠れなかったのかもしれない。


「千奈、ひどい顔」


さやがそう言い、あたしを指さした。


最近ロクに眠れていないから、頭もボーっとしている。


「杏は幸せ者だな。ここまで心配してくれる友達がいて」


克矢に少し嫌味のような言い方をされてあたしはムッとした。


仲のいい友達を心配するのは当たり前のことだ。


克矢にはそういう気持ちがないんだろうか?


「お前だって、心配してるから毎日杏を探してるんだろ」


裕斗が克矢へ向けてそう言うと、克矢は「とりあえず、だ」と、そっぽを向いた。


「裕斗、今日はどうするか決めてある?」


あたしが聞くと、裕斗は「今日は夏男の様子を伺う事にしようと思う」と、答えた。


「やっぱり、怪しいのは夏男だと思ってるの?」


そう聞くと、裕斗は難しい表情をして頭をかいた。
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