沈黙する記憶
目立った変化
公園で裕斗たちと別れたあたしは1人で夏男の家に向かっていた。


もう何度も訪れたこの家の前であたしは1つ深呼吸をした。


裕斗の推理の中には夏男の両親が怪しいというものもあった。


それも念頭に置いて、夏男を接さなければいけない。


夏男になにか変化があればすぐに裕斗に連絡するようになっている。


でも、仮に夏男が犯人だったとしたら、連絡をする前にあたしも杏と同じようにどこかに監禁されてしまう可能性もあった。


あたしは何度か手のひらの汗をぬぐい、覚悟を決めてチャイムを押した。


家の中から呼び鈴の音が聞こえて来る。


少し待つと、パタパタとスリッパの音が聞こえて来た。


「はい」


そんな声と同時に玄関が開き、夏男のお母さんが顔を出した。


「あ、あの……夏男はいますか?」


少し言葉に詰まりながらそう言うと、夏男のお母さんは「今日はいるわよ」と、家に上げてくれた。


あたしは夏男のお母さんの様子を伺いながら夏男の部屋へとむかった。
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