沈黙する記憶
気になるもの
「すげぇ人だな」


克矢はそう言い周囲を見回した。


「夏休みだから、仕方ないよ」


「はぐれるなよ」


そう言い、克矢があたしの手を握る。


自然な成り行きだったけれど、その手の大きさにドキリとしてしまう。


昨日はあたしの腕を痛いほどに掴んでいた手が、今はあたしの手を優しく握りしめている。


それはとても不思議な気分だった。


克矢とあたしは若い子たちに一番人気のショッピングビルへと入っていた。


縦に高いが横には小さいため、ワンフロア探すのに時間がかからなかった。


「どこにもいないね……」


似たような女の子たちであふれているけれど、杏の姿はどこにも見えない。
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