沈黙する記憶
「あぁ……」


夏男はそう返事をするが、ぼんやりと空中を見つめている。


杏の失踪は夏男をここまで追い込んでいるのだ。


「夏男がしっかりしなきゃどうするの?」


由花が少し怒ったようにそう言った。


夏男がここまでやつれているとは思っていなかったのだろう、由花もさやも泣きそうな顔をしている。


「夏男、辛いかもしれないけど、俺たちに少し話を聞かせてくれ」


裕斗がゆったりとした口調でそう言った。


夏男の目が裕斗を捕らえる。


「話?」
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